安いデジタルアンプが花盛りです。TIのTPA3255などは@1,000円しないチップで300W×2の出力が出せます。そのため安いアンプでは完成品が1万円もしないで購入できます。しかし随所に安く作るための問題があり、そこを変えることで別次元の製品になると思います。
AIYIMA A07を改造しまくった経験などを記載していきます。
新型のA07maxも登場しています。音質的にはこちらがお勧めです。
Amazonでは売っていませんが、GaNタイプの48V電源にするとさらに音質が上がります。
AC200Vにすると音質がさらにUP
以下はTPA3255を使った高級系の基板になります。メインの電源のコンデンサと出力LPFのインダクタが豪華です。ただ入力系が多分片電源のため、コンデンサでDCカットしています。
音質劣化の課題
今回内部解析して確認した事項などを以下に列記していきます。
1.電源
デジタルアンプはメイン電源をPWM変調で音声に変換しているので、電源品質が音質へ大きな影響を持ちます。
TPA3255などは600kHzの周波数でPWM変調をかけているので、S/Nも大事ですが電源の応答特性も早くないといけません。
ACアダプタ
付属のACアダプタは安い33V/5Aのため非常にノイジーです。200mV以上の高周波ノイズが漏れています。
手っ取り早く音質を改善するには、NFJさんのフィルタを入れると良いです。
そこそこ聴けるようになります。
こちらのフィルターも気になっています。今度購入してみたいと思います。
追加でバルクキャパシタも入れるとより効果があります。
大電力供給部
パワー段に電力を供給するコンデンサは容量が少なく、インピーダンスも高い物が使用されています。デジタルアンプはPWM制御で高周波の幅を変えているので、瞬間的な電力が不足すると音質に影響が大きいです。
下の図はアナログデバイスの「D級アンプ:基本動作と開発動向」から参照しています。
TPA325Xなどでは、600kHzの搬送波の幅を瞬間的に変化させて波の幅を変換し、最後にLPFで600kHzを除去すると、パワーアンプとして動作します。この波の幅の変化に追従できない電源だと、音がきちんと出ないことになります。
このように考えると電源のノイズ成分も減らしたほうが良いですが、電源の過渡応答特性を重視した電源が必要だと考えます。通常の電解コンデンサだと低域では十分な性能ですが、600kHzの変動に追従するのは厳しいので、大本に低ESRの大容量電解コンデンサ・直近に高周波特性の良い積層セラミックコンデンサなどを分散して置くのが良い結果を生みそうです。
入力段電源部
入力段へはDC33Vを15Vにドロップ式のDCーDCコンバータで落としています。
その後、12Vの3端子レギュレータでオペアンプ・TPA3255の入力へ電源を供給しています。
このDC-DCも高品位ではなく発振周波数も150kHz程度のため、結構なノイズを出しています。
リップル除去もDC-DC・3端子レギュレータともに安い電解コンデンサ+MLCCです。
この部分はアナログ回路が主となるので、S/Nの良い電源が必要になります。
出力の電源と相反する条件となりますので、なかなか難しいです。
2.出力のLPF
PWM制御のため元周波数の600kHzが出力に出るのを防ぐために、f0が50kHz程度のLCフィルタが入っています。このインダクタが音に大きく影響します。
音声帯域がフラットな特性で、600kHz以上でもインダクタとして動作し、抵抗の損失が少ない物が必要です。
LCフィルタを構成するコンデンサも音質に影響しますが、インダクタに比べて周波数特性が良好な物も多いので、選択肢は相当あります。
Lは良い物を使うと大きさも大きくなりコストに多大に影響しますので、AIYIMA A07では、そこそこのトロイダルコアのインダクタを使っています。
入力バッファのオペアンプ
TPA3255は入力のインピーダンスが低めのためオペアンプでドライブする場合が多く、AIYIMA A07もオペアンプが入っています。
本来は±の電源でドライブするのが良いのですが、片電源で動かしています。
オペアンプを片電源で動かすため出力にDCが重畳されるので、電解コンデンサでDC分をカットしなくてはなりません。これも音質劣化の原因になります。
オペアンプを少し良いやつに変えるだけでも、高音質化します。
3.ボリューム
ボリュームも小型のBタイプのボリュームが付いていますが音質も悪く、すぐガリがでます。
サイズ的に交換が難しいので、入力段のゲインを落としてフル天にしています。(フル天とはボリュームが最大ということです)
4.抵抗
測定値からすると1%級の抵抗ですので、金属皮膜抵抗だと思われますが進工業のRGシリーズとかに入力段を変えると音がよくなります。
以上を対応したら、全体の80%以上の部品を交換することになってしまいました。
それでも内部電源などはいじるのが難しいので、そのままとなっています。
まとめ
TPA3255は安価で音の良いアンプとして地位を築きましたが、電源部や周辺回路によって大きく音が変わります。それなりの音質のアンプを作るのには、最低3万から5万はかかると思います。
Aliexpressを見ていたら、値段は高い(基板だけで16k程度)ですが、きちっとした作りのTPA325X系のボードを見つけました。これにすれば半分くらいに交換比率が下がったと思います。このショップではAC-DCも扱っているのでちょっと気になります。
VER/AGP2923
過去記事でこれから使おうと思っているAGP2923が使われています。
TPA325Xも背面実装なので、放熱も楽ですね。
ただオペアンプがSOP8のため、交換するにはそれなりの道具が必要です。
HPは以下になります。
http://www.3e-audio.com/amplifier-kits/tpa32xx-with-pffb/?spm=a2g0o.detail.1000023.1.687c56cdAfTqjn
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