染み込まない素材に書かれたマジックの痕はIPAで綺麗に落とせます。IPAはエチルアルコール(無水アルコール)などと同じで、清掃や消毒・溶剤として使われますが、毒性も臭いも比較的低く洗浄力は普通のアルコールよりも高く、純度も99.5%以上あるため清掃後の不純物が残ることも少なく、揮発性もアルコールより低いので洗浄には使いやすいです。
IPA(イソプロピルアルコール)の用途
・洗浄用の薬品として
電子回路などで使われている洗浄液はIPAがかなりの割合で含まれています。
基板のフラックス清掃や端子の清掃に使うと、白くなりにくく綺麗に落ちます。
車のガラスに使うガラコなどはIPAで溶かしていますので、掃除時はIPAで拭き取るとゴミも含めて綺麗に落ちます。
・塗料の希釈材として
アルコールで薄めるタイプの塗料希釈材として使えます。蒸発がエタノールなどに比べて遅いので、希釈材として良く使用されます。
・車などの水抜き材として
IPAはガソリンや水との親和性が高いので、タンク内で分離した水をガソリンと混ぜて燃焼できます。
ガソリンスタンドで進められるものと同一成分なので、水抜き材としても使えます。
追記:水抜き材としては役に立たないとのコメントがありました。使う人は自己責任でお願いします。
・脱脂材として
塗装前の脱脂材として使われます。エタノールと比べて純度が高いのでゴミが残りにくいのが良いです。
・殺菌用として
50-70%に希釈して殺菌用に使います。A型インフルエンザウイルスやコロナウイルスなどに対しても濃度が70%程度のIPAであれば10〜15秒でウイルスの感染力や毒性を失わせる効果(不活化効果)があります。
電子部品清掃
有機溶剤の中では比較的安全なIPAですが使用時は換気が必須です。我が家では窓用ウインドファンを改造して、換気を行っています。
IPAはプラスチックを侵す場合が多いので小分けする場合は、ボトルの材質には気を付けなくてはいけません。攻撃性は他の有機溶剤に比べて低いのでABSなどの清掃程度なら問題ありません。
使用材料
IPA本体
純度99.9%以上のIPAです。
ニードルボトル
ニードルボトルは、電子タバコ用の液体を入れるために作られている場合が多いので、溶剤に対しての耐性が高い物が多く使いやすいです。PP(ポリプロピレン)PE(ポリエチレン)製のボトルであることを確認してください。
キムワイプ
拭き取り時に繊維が残らない電子工作マニア(業務用にも)ご用達のティッシュ?です。S-200が小さくて細かいところを拭くには使い勝手が良いです。こする過ぎるとけば立つので、同じ部位は再利用しないほうが良いです。
静電防止ブラシ
こちらも電子部品についたホコリやごみを払うのに使ってます。静電気が起きたらよりゴミが付着します。電子部品に静電気は鬼門ですので、静電防止ブラシがお勧めです。
実際の使用例
基板のフラックス清掃
0.5mmピッチのICをハンダ付けしたところ
フラックスがベタベタで変色してます。拡大しているので上の1608(1.6mm×0.8mm)のチップが大きく見えます。
IPAで洗浄後
ここまで綺麗になります。手順は下記のとおりです。
IPAをニードルボトルで少量たらす
キムワイプで拭き取り
再度IPAを垂らす。静電ブラシで軽くこする
再度IPAを垂らす。キムワイプで拭き取り後、乾燥
マジックを消す
パネルにマジックで書いてある文字を消します。
消したい文字の上にIPAを垂らします。
少ししてから拭き取ればこの通り
綺麗に消えています。
最近はIPA等で消えてしまう塗料はパネルなどに使用することは少ないですが、塗装面や印刷の文字などに使用すると、消えてしまうこともありますので、最初に目立たないところで試すようにしてください。
熱収縮チューブの文字消し
オーディオケーブルの熱収縮チューブに、文字が入っていると今一なので消します。
IPAを垂らして、キムワイプでゴシゴシすれば
綺麗に消えました。
まとめ
私はエタノールよりIPAを多用しています。安くて純度も高く綺麗に落ちるからです。
エタノールのほうが飲用したりしても安全ではありますが、飲むことはないですし、エタノールの痕が付くのが嫌だからです。(エタノールの高純度物でも99.5%・IPAは99.9%以上)
後、多用途に使えるのが良いです。車のウインドウ掃除にIPAを使うとホントに綺麗になります。
特性や危険性については、以下に記載していますので読んでいただくと幸いです。引火が一番危険ですので保管場所には注意してください。
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参考資料
代表性状
ENEOS HP参照
項目 | 単位 | 代表値 | |
---|---|---|---|
外観 | – | 無色透明 | |
密度(15℃) | g/cm3 | 0.786 | |
沸点 | ℃ | 82.4 | |
融点 | ℃ | -89.5 | |
引火点(タグ密閉) | ℃ | 15 | |
危険物分類 | – | 第4類アルコール類 | |
粘度(20℃) | mm2/S | 2.43 | |
燃焼範囲(下限) | VOL% | 2.0 | |
燃焼範囲(上限) | VOL% | 12.0 | |
SP値 | 11.9 | ||
表面張力 | dyne/cm, 25℃ | 20.8 | |
毒性・有規則分類 | 第2種有機溶剤 | ||
許容濃度 | PPM | 400 | |
蒸気比重(空気=1) | – | 2.1 | |
労働安全衛生法 施行令第18条の2別表第9 名称等を通知すべき有害物 (632物質) | – | NO.492 プロピルアルコール | |
PRTR法第1種 | 該当物質なし | ||
PRTR法第2種 | 該当物質なし | ||
既存化学物質番号 | – | (2)-207 | |
CAS.NO. | – | 67-63-0 | |
TSCA登録 | – | 有 | |
国連番号 | – | 1219 |
IPA(イソプロピルアルコール)の注意事項
MinacolorHP参照
イソプロピルアルコール(IPA)を皮膚に使用する場合
IPAは脱脂作用が高く、消毒などで頻繁に使用した場合、乾燥や皮膚の炎症を起こすことがあります。そのため、日常的に使用するのであれば、消毒用エタノールまたは、消毒用エタノールにIPAを添加したものの方が安全に使用することができます。肌の弱い方は、合わせて保湿を行うこともおすすめします。
また、損傷している皮膚や粘膜などには刺激作用があるため使用しないでください。
医療機器等を消毒・殺菌する場合
血清や膿んだ汁などのタンパク質を凝固させ、殺菌・消毒効果が浸透しない場合があるので、医療機器などに使用する際はしっかりと汚れを洗い流してから使用してください。
合成ゴム・樹脂製品や光学器具にはIPAを使用すると変質するものがあるので長時間液剤に浸すことはしないでください。
使用する時の注意
IPAは引火点が12℃と非常に引火性が高い液体です。そのため火に近づけると引火するおそれがあるため、火気に近づけないように注意してください。静電気などにも十分に注意が必要です。
また、揮発性があるので、蒸気が空気と混合することにより高濃度の爆発性のあるガスが発生します。密室などではガスが滞留することがあるので使用する際は必ず換気ができる場所で使用してください。
イソプロピルアルコール(IPA)で気分が悪くなったら…
IPAを吸入してしまい気分が悪くなった場合はすぐに、新鮮な空気の場所に移動し休息をとってください。念のため医師の診療を受けてください。
また、眼などにIPAが入った場合は、眼を流水で15分以上よく洗い流し、異常がある場合はすぐに医師の診療を受けてください。
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